矯正相談で「あなたはハイアングルなので…」と言われて、何のことかわからなかった…そんな方もいるのではないでしょうか?
実はこの「アングル」とは、顔の骨格の“縦の長さ”に関するタイプ分けのこと。矯正治療ではこの違いがとても重要です。
下の2人は「アングル」が正反対です。
どこが異なると思いますか?
左は、顎が後ろに回転しているハイアングルです。顎が後ろに回転して後退しています。
右は、顎が前に回転しているローアングルです。顔の下半分がクシャっと短いです。
ハイアングルとは?
- 顔が縦長の印象
- 下顎の角度(下顎枝角:gonial angle)が大きく、顔の下半分が長く見える
- 開咬や口呼吸の傾向があることも
- 噛む力(咬合力)が弱く、咀嚼筋が発達しにくい
矯正治療では…
歯を動かす際に、後方回転(clockwise rotation)しやすく、さらに“顔が長く”なるリスクがあるため、慎重に力のコントロールをする必要があります。
例えば、奥歯の挺出(extrusion)や前歯の唇側傾斜を避け、垂直的なコントロールが重要です。
ハイアングルを積極的に改善させる場合には、奥歯の圧下を狙って行います。
その際の下顎の動かし方をオートローテーション(カウンタークロックワイズローテーション)と言います。
ただし、このオートローテーションを狙うかどうかは骨格や歯並びの状態を総合して行うかどうかを判断しますので、ハイアングルの方が全員この治療が必要というわけではありませんので注意して下さい。
ローアングルとは?
- 顔が短くがっしりした印象
- 下顎の角度が小さく、下顎が水平にしっかり成長している
- 噛む力が強く、咀嚼筋が発達している
- 過蓋咬合(深い咬み合わせ)になりやすい
矯正治療では…
噛む力が強く歯を押さえつけることにより、歯の移動が遅かったり、計画通りに歯が動かないこともあります。
また、ローアングルは過蓋咬合を伴うことが多いです。
過蓋咬合の改善には、以下の4つを考えて治療計画を組みます。
①上顎前歯を圧下②下顎前歯を圧下③上顎臼歯を挺出④下顎臼歯を挺出
このどれを行うのか、組み合わせるのかは上下のバランスを慎重に考えて治療を行うのが安全です。
アベレージアングルはその中間
ハイアングルとローアングルの中間のタイプを「アベレージアングル」と呼び、比較的バランスのとれた顔貌です。
アングルにはそこまで気を払わなくても問題なく治療を進められることが多いです。
顔のアングルはどのように診断するの?
レントゲン(セファログラム)で下顎下縁平面角(SN-MPやFH-MPなど)を計測し、基準角度との比較で判定します。
近年では3Dスキャンや顔貌診断ツール(例:RayFace)でも顔の比率がわかるようになり、患者さんとの治療前のイメージ共有にも役立っています。
まとめ:アングルタイプは治療法に関わる
患者さんにとっては一見分かりにくい「ハイアングル」「ローアングル」ですが、矯正治療計画の立案や治療の進め方には欠かせない情報です。
ただし、アングル(下顎下縁平面角)はその人の生まれ持った骨格の一つであるため、
必ずしもハイアングルやローアングルを無理やり基準値にしないといけない訳ではありません。
むしろ矯正治療単独で治す場合には限界があるのも事実です。
どこまでは改善が見込めるのか?
この症例は積極的に改善させる必要があるのか?
もし計画通りに改善が出来ない場合のplanBは準備・想定されているのか?
など考えることはたくさんあります。
また、これらは矯正治療の経験・知識が必要とされるところでもありますし、垂直的なコントロールは難しい分野だと感じます。
私自身も臨床経験や学びを重ねながら、患者さんへの治療を今後もより研ぎ澄ましていきたいと思います。
赤坂矯正歯科 院長 黒岩哲良
赤坂矯正歯科では、顔全体のバランスを診ながら、あなたに合った矯正治療をご提案します。