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一般の歯医者に比べて、矯正治療は血を伴うような観血的処置は少ないです。
少ないですが、以下の処置では観血的処置が必要になります。
①抜歯 ②歯科矯正用アンカースクリューセット ③開窓牽引 ④スピード矯正(加速矯正)手術 ⑤その他
これらの処置は麻酔を用います。
目的とする効果は麻酔と血管収縮です。
今回は矯正治療で主に使用される麻酔(当院でも使用)に関してお話します。
麻酔の種類について
まず適用部位に表面麻酔を塗布して感覚を鈍らせてから、針を刺して麻酔薬を効かせていく流れです。
表面麻酔:ハリケイン歯科用20%

まず初めに表面麻酔を塗布して3-5分待ちます。これにより針を刺すときの痛みを抑えることが出来ます(85-97%有効と報告)。
事前に適用部位をしっかり乾燥防湿させておくと効果が最適化されます。
ほとんど多くの患者さんに使用可能ですが、以下の注意事項もあります。
禁忌:安息香酸エステル系局所麻酔剤に対してアレルギー既往のある患者。メトヘモグロビン血症のある患者。
浸潤麻酔:①キシロカイン②オーラ注③シタネスト④スキャンドネストの4種類+NEW1種類
①キシロカイン

成分:リドカイン(麻酔薬)+ アドレナリン(血管収縮薬)
特徴:リドカインは、アミド型局所麻酔薬に分類され、神経の興奮伝導を一時的に遮断することにより痛みを感じなくさせます。
アドレナリンのα作用により血管収縮作用(末梢血管床の収縮により局所の血流を減少させ、麻酔薬の吸収を遅らせ、効果の持続時間を延長して、局所麻酔薬の全身反応を減少させる)と出血の抑制効果があります。
持続時間:60-90分
②オーラ注

成分:リドカイン(麻酔薬)+ アドレナリン(血管収縮薬)
特徴:当院では基本的にこれを使用します。
キシロカインと似ているが、よりアドレナリン濃度が高いので血管収縮効果による出血の抑制が期待できる。
持続時間:60-90分
①②ともに成分は同じで迅速な効果の発現と効果の持続が長いです。
歯科用の局所麻酔としてはファーストチョイスになりますが、注意事項もあります。
禁忌:アミド型局所麻酔薬に対しアレルギー既往歴のある患者
・高血圧、動脈硬化、心不全、甲状腺機能亢進、糖尿病、血管攣縮の既往のある患者
・心刺激伝導障害、腎機能障害、肝機能障害の患者
③シタネスト(シタネスト-オクタプレシン)

成分:プロピトカイン(麻酔薬)+フェリプレシン(血管収縮薬)
特徴:最大の違いは血管収縮薬にフェリプレシンを使用しており、アドレナリンによる影響を受けそうな高血圧の方、心疾患の方にはフェリプレシンの方が安全のためこちらを使用します。アドレナリン禁忌患者にも使用可能。
ただし、効果の発現が遅い、効果の持続時間がやや短いなどの欠点もあります。
持続時間:45-60分
④スキャンドネスト

成分:メピバカイン(麻酔薬)、血管収縮薬はなし
特徴:血管収縮薬を含まないピュアな局所麻酔薬で、唯一防腐剤も含まれていないため、アレルギー体質の患者にも使用可能です。
短時間の処置向け。アドレナリン禁忌患者にも使用可能。
欠点は効果の発現が遅い、効果の持続時間が短い。
持続時間:30-45分
⑤セプトカイン

成分:アルチカイン(麻酔薬)+ アドレナリン(血管収縮薬)
特徴:リドカインと同じアミド型局所麻酔薬であり、効果はリドカインに似ている。作用発現が早く、効果の時間が長い。
血中で代謝されるため肝機能低下している方にも有効。
2025年に新しく発表された局所麻酔薬。
*全ての麻酔に共通
・妊婦または妊娠の可能性がある女性への投与は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に限定すること
・授乳婦への投与は、治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
・新生児や3歳未満の幼児への使用は安全性が確立されていないこと
臨床の現場では、血管収縮薬の選択において「なぜその薬剤を選択したのか」という根拠を明確にすることが、医療安全と治療効果の向上につながります。
これらの麻酔は治療目的や患者の状態に応じて適切に選択することが重要になります。
赤坂矯正歯科では、外科的な処置を行う場合は基本的に②オーラ注を使用します。
患者さんのアレルギーの既往や全身状態を考慮して②が利用できない場合は、
③シタネスト④スキャンドネストを検討するという流れになります。




