目立たない矯正(裏側矯正)
目立たない矯正(裏側矯正)
裏側矯正とは、矯正器具を歯の裏側に装着して治療をおこなう矯正方法であり、舌側に矯正器具を装着するため、舌側矯正やリンガル矯正とも呼ばれています。
1979年に神奈川歯科大学のDr藤田によって開発された矯正方法です(世界中で利用されている裏側矯正の開発者が日本人である事実は、日本人の技術力の高さが世界でもトップクラスということです)。
歯の裏側にブラケットを装着し、ブラケットにワイヤーを通すことで、力を加えて歯を動かします。一般的な表側矯正装置は目立ちやすいですが、裏側に装置を取り付けるため、外からは見えにくいです。
よほど大きく口を開けなければ、相手から矯正装置が見えることはほとんどありません。
そのため裏側矯正であれば、接客業や営業職など職業的に矯正治療が難しいとされている職種の方々でも矯正治療が行いやすいと言われています。
当院ではすべてのワイヤー矯正治療「インダイレクトボンディング法」を採用しています。
従来の方法に比べて効率よく、快適な治療法となっています。
またどの矯正治療においても一番大切な工程が「治療計画の策定」です。治療期間の長さ、完成度はこの治療計画で大きく左右されます。最適な治療計画を作るには専門的知識と豊富な症例数が必要です。当院では日本矯正歯科学会認定医が治療計画を策定いたしますのでご安心ください。
裏側矯正には、以下のようなメリットがあります。
裏側矯正は、歯の裏側に矯正器具を装着するため、矯正器具が目立ちづらく、周りに気づかれずに歯列矯正ができることが特徴です。
職業柄、矯正器具を目立たせたくない場合や、写真撮影を控えている場合などでも、矯正器具を気にせずに矯正治療ができます。
裏側矯正は、とにかく矯正器具を目立たせたくない方におすすめの矯正方法です。
矯正器具を装着していると、矯正器具の周りに歯垢や食べかすがたまりやすくなるため、虫歯や歯周病になりやすいです。特に装置が裏側につくことで虫歯のリスクが高いと感じる方が多くいらっしゃいます。
しかし、実は意外にも裏側装置の方が虫歯のリスクは低いと報告されています。
*(*2010年 舌側矯正で世界的に有名なドイツ矯正歯科医師の論文より引用 *Caries outcomes after orthodontic treatment with fixed appliances: do lingual brackets make a difference?**Eur J Oral Sci. 2010 Jun;118(3):298-303.)*
その理由は、舌には唾液を分泌する組織があり、歯の裏側では唾液が循環しています。唾液が歯垢や食べかすを洗い流したり、唾液の緩衝能、殺菌作用や再石灰化作用がはたらいたりするため、表側矯正よりも裏側矯正の方が虫歯や歯周病のリスクが低くなります。 ただし、歯磨きを怠ってしまうと、虫歯になるリスクは高まるため、日々のケアを心がけましょう。
口を閉じているときの舌は、上の前歯の付け根から1cm程下がった位置にあるのが正常で、歯には当たりません。ところが、舌癖がある場合は舌が歯に押し当てられ、舌の力で前歯を押して出っ歯の原因になってしまいます。
そのため、舌癖を直さないと、歯並びを整えたとしても後戻りするリスクが高まります。裏側矯正の場合、歯の裏側に器具を装着するため、歯の裏側に舌を押し当てる癖を抑える効果が期待できます。そのため、矯正治療中に舌癖を改善出来れば、後戻りのリスクを減らせるでしょう。
裏側矯正では、矯正器具を歯の裏側に装着するため、唇に直接器具が当たらず、口元をぶつけた際に口腔内が傷つくリスクが下がります。
そのため、転倒やスポーツによる口腔内のトラブルを防ぎやすく、日常的に運動をする方におすすめです。
裏側矯正には、表側矯正よりも前歯を後方に動かしやすいメリットがあります。
前歯が出ている方では、抜歯をしてスペースをつくってから前歯を後ろへ動かす治療をおこないます。
奥歯と前歯が引っ張り合うことにより前歯を引っ込めていきます。その際に、固定源の奥歯が前へ動いてしまう(これをアンカレッジロスと言います)と、スペースが狭まってしまうため前歯を予定通りに引っ込めなくなる可能性があるのです。この原理は、表側矯正・裏側矯正の両方に当てはまります。
2016年に表側矯正と裏側矯正のデータを治療結果などを比較した研究では、表側矯正に比較して裏側矯正の方が奥歯が前にずれてしまう量が少なく(アンカレッジロスが少ない)、その結果、表側矯正よりも効果的に前歯を後方へ動かせたという報告があります。
*(*2016年 矯正有名学術雑誌より引用 *Lingual vs. labial fixed orthodontic appliances: systematic review and meta-analysis of treatment affects Eur J Oral Sci. 2016 Apr;124(2):105-18.)*
裏側矯正には以下のような6つのデメリットがあります。
裏側矯正では、歯の裏側に矯正器具を装着するため、舌に違和感や痛みを感じることがあります。
ただし、矯正器具を装着してから2週間ほどで違和感は薄れることが多く、矯正器具を装着している間、ずっと違和感があるわけではありません。
また、舌に矯正器具が接触して傷つき、口内炎ができやすくなる方もいます。
歯の裏側に矯正器具を装着するため、舌の普段の位置が少し変化します。また、歯の裏側の矯正器具が邪魔になり、舌を歯の裏側に当てて発音する言葉(サ行・タ行・ナ行・ラ行)が発音しづらくなりやすいです。とくに、舌は下顎の装置に敏感に反応するので、下顎の装置に慣れてしまえば滑舌への影響は少ないです。
多くの方は1-2ヶ月ほどで慣れて、発音のしずらさも改善されますが、スピーチパフォーマンスの低下が気になる方は開始時期について検討されることをお勧めします。
矯正器具が小さく、鏡で見えずらいため歯磨きが難しくなります。
そのため、通常の歯ブラシ以外にタフトブラシやデンタルフロスなどを使うことをおすすめします。
他の矯正装置に比較すると、歯の裏側の矯正器具のまわりには歯垢や食べかすがたまりやすいため、1日に1回20-30分ほど集中して歯磨きすることをお勧めします。
また、どんなに頑張って磨いても限界がある為、定期的に歯科医院での専門的なクリーニングを行うことをお勧めします。
裏側矯正に限らずワイヤーによる矯正方法は、食べものが矯正器具に挟まりやすく、噛みにくさを感じる方もいます。
なかでも、麺類や繊維質の食べものは矯正器具に挟まりやすく、食物残渣があるとストレスになる場合もあります。まれに舌を噛んでしまう場合もあります。
裏側矯正では、矯正器具の製作に時間がかかるため表側矯正よりも治療期間が長くなる可能性が高いです。矯正器具の製作に1〜2ヶ月程度かかります。
また、裏側矯正はブラケット間のワイヤーが短いため、ワイヤーがたわみづらく、ワイヤーの調整回数を増やすことが必要です。
これも、裏側矯正の治療期間が長くなる原因の1つといえます。
裏側矯正は高度な技術が必要とされる矯正方法であり、装置もオーダーメイドになります。
そのため、表側矯正に比べて費用が高額になるデメリットがあります。矯正器具が目立ちづらいメリットもありますが、ほかの矯正方法と値段を比較してから、裏側矯正を検討することをお勧めいたします。
裏側矯正には、以下の2つの種類があります。
フルリンガル矯正とは、上下の歯の両方で矯正器具を裏側に装着して、歯を動かす矯正方法です。
フルリンガル矯正では、矯正器具が目立ちづらいため、矯正器具を目立たせたくない方におすすめです。
ハーフリンガル矯正は、上の歯は裏側、下の歯は表側に矯正装置を装着する矯正方法です。
舌の当たりやすい下の歯は表側に矯正装置があるため、フルリンガルよりも口の中の痛みや違和感、話しずらさが小さくなります。
下の歯は唇で隠すことができるため、表側矯正よりも矯正器具を目立ちづらくできます。
フルリンガル矯正よりも値段が安くなるため、多少であれば矯正器具が見えても気にならない方にお勧めです。
裏側矯正の場合、歯の裏側に矯正器具を装着しますが、舌が極端に大きいと治療の邪魔になることがあります。
矯正器具を装着することはできますが、舌を噛みやすくなったり、舌と矯正器具が接触して傷つきやすくなったりとデメリットが大きいです。
そのため、舌が極端に大きい場合には、裏側矯正が向いていないため他のアプローチをお勧めします。